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ISO14001初歩の初歩

法令の見かた、読み方

ISO14001:2004の則した環境マネジメントシステムを構築・運用していくには、法令に対する基本的な知識が不可欠となります。ここでは、基礎的な法令の見かた、読み方、使い方について言及していきます。

1.法令の見かた

(1)法令等の種類

『法令』とは、法律と命令とをあわせて呼ぶ法用語として使用されています。法律とは、国の唯一の立法機関である国会によって定立される成文法を指し、命令とは、国の行政機関(省庁だけでなく省庁の長も含む)が制定する法規範(政令・省令など)を指します。また、地方公共団体の制定する条例・規則や最高裁判所が定める最高裁判所規則などを含む意味で使用されることもあります。

ISO14001:2004が4.3.2で要求する法的要求事項には、基本的に上記の法令が該当することになります。またこの他に、国の行政機関が出す通達もありますが、通達自体は行政間の文書であり法令には該当しません。しかし、通達には地方自治体が実際に法を適用させていく際の方針が記述されていますので、実務上、無視することはできないでしょう。特に、『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』の運用は、ほぼ通達によりなされているといっても過言ではありません。通達は、官報公示されませんので、環境省のホームページなどで入手することをお薦めします。

一方、地方自治体においては、条例の他に要綱などもあります。条例が地方議会での決議を受けているのに対し、要綱は地方自治体内部の取り決めによるものです。いわゆる行政指導の場面で活用されます。行政指導には法的な拘束力はなく、自主的に従うことを求めるものですので、ISO14001:2004が4.3.2で要求する法的要求事項には、該当しません。

また、地方自治体と組織が締結する協定は、第三者に対して公表されることはありませんが、二者間における一種の契約ですので、順守することが求められます。協定に関しては、法的要求事項ではなく、その他の要求事項として管理していくことが妥当でしょう。

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(2)法令等の相互関連

法令間の地位は、@憲法、A法律、B府令・政令、省令、C告示、の順位となります。上位の法令に抵触する下位の法令の効力は否定されます。また、同じ法令間において内容が矛盾するときは、時間的に後に成立した法令が前に成立した法令に優先します。一般法と特別法の間では、特別法の規定が優先されます。

環境法の場合、法律は枠組みについて規定され、具体的な規制基準などは政令、省令に委任されていることが多い状況です。そして、さらに基準の運用手順については通達で示されることも多くあります。したがって、ISO14001:2004の法的要求事項を順守していくためには、法律だけではなく、政令や省令、場合によっては通達レベルにまで視野を広げる必要があります。

一方、条例は、法令に違反しない限りにおいて、各地方公共団体が制定するものです。適用範囲は法律とは異なりその地方公共団体の管轄する地域のみとなります。条例は、懲役・禁固・罰金・拘留・科料・没収・過料を科す罰則規定を設けることができます。環境関連の条例にも罰則規定を有するものがありますので、注意が必要となります。
また、法令からの委任などにより、条例は法令よりも厳しい基準(上乗せ)、広い範囲の規制(横だし)を規定することが可能な場合があります。
例えば、水質汚濁防止法第3条3項では、『都道府県は、当該都道府県の区域に属する公共用水域のうちに、その自然的、社会的条件から判断して、第1項の排水基準によっては人の健康を保護し、又は生活環境を保全することが十分でないと認められる区域があるときは、その区域に排出される排出水の汚染状態について、政令で定める基準に従い、条例で、同項の排水基準にかえて適用すべき同項の排水基準で定める許容限度よりきびしい許容限度を定める排水基準を定めることができる』と規定されています。環境関連の条例は、ほとんどの場合、このような上乗せ・横だし基準が多く設定されていますので、正確に把握することが必要となります。

2.法令の読み方

(1)官報、法令集における法令の読み方

官報などに掲載された法令原文の読み方について、以下にあげる「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」を参考としてみていきましょう。

(2)基本的な法令用語の読み方

法令に使われる用語はや文言のなかには、一般の国語とは異なる使い方をするものがあります。また、正確性を期するために立法技術的な読み方をするものもあります。これらの用語・文言の読み方を誤ると、法令順守に抵触してしまう可能性もありますので、注意が必要です。ここでは、主に環境法に関係する法令用語を中心に解説をします。

(a)『又は』と『若しくは』

『又は』と『若しくは』は、数個の並列された語句のなかのどれかという意味で使われる選択的接続詞です。

『又は』が使われる場合

選択的に並べられる語句に優劣などの段階が存在しない場合に、A又はBのように『又は』を使います。この場合、A又はBでも、B又はAでも基本的に文意は変わりません。並べられる語句が3つ以上あるときは、A、B又はC、というように最初の語句を句点でつなぎ、最後の語句の前に『又は』が使われます。

【例】燃料その他の物の燃焼又は熱源としての電気の使用に伴い発生するばいじん(大気汚染防止法第2条第1項第2号)

『若しくは』が使われる場合

選択される語句が3つ以上あり、これらの語句の間に意味上の段階が存在する場合には、A若しくはB、又はCのように『若しくは』及び『又は』を使います。この場合、より大きな意味の語句を『又は』で結び、その他の語句を『若しくは』でつなぎます。つまり、(A若しくはB)又はCという意味になります。

【例】第三条第一項若しくは第三項又は第四条第一項の排出基準(大気汚染防止法第5条の2第1項)

(b)『及び』と『並びに』

『及び』と『並びに』は、数個の並列された語句のいずれもという意味で使われる併合的接続詞です。

『及び』が使われる場合

併合的に並べられる語句に優劣などの段階が存在しない場合に、A及びBのように『及び』を使います。この場合、A及びBでも、B及びAでも基本的に文意は変わりません。並べられる語句が3つ以上あるときは、A、B及びC、というように最初の語句を句点でつなぎ、最後の語句の前に『及び』が使われます。

【例】当該地域が指定地域となった際又は当該施設が特定施設となった際その者に適用されている地方公共団体の条例の規定で第一項の規定に相当するものがあるとき、及びその者が第八条第一項の規定による届出をした場合において当該届出が受理された日から三十日を経過したときは、この限りでない。(騒音規制法第12条第3項)

『並びに』が使われる場合

併合的に並べられる語句が3つ以上あり、これらの語句の間に意味上の段階が存在する場合には、A及びB、並びにCのように『並びに』及び『及び』を使います。この場合、より大きな意味の語句を『並びに』で結び、その他の語句を『及び』でつなぎます。つまり、(A及びB)並びにCという意味になります。
【例】国は、廃棄物に関する情報の収集、整理及び活用並びに廃棄物の処理に関する技術開発の推進を図り、(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第4条第3項)

(c)『直ちに』『速やかに』『遅滞なく』の時間的関係

『直ちに』『速やかに』『遅滞なく』は、いずれも時間的な緊急度を表す用語です。
下記の例を読んでみてください。『直ちに』『速やかに』はどちらの緊急度が高いでしょうか?

生活環境の保全上の支障が生じ、又は生ずるおそれがあるときは、直ちに、引き続くその支障の除去又は発生の防止のための応急の措置を講ずるとともに、速やかにその事故の状況及び講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければならない。(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第21条の2第1項)

上記の例は、廃棄物及び清掃に関する法律の事故時の措置に関する条文です。事故が発生してしまっているのですから、当然、支障の除去・応急措置をすることのほうが、その報告をするよりも緊急度は高いといえるでしょう。『遅滞なく』はそれよりもさらに緊急度は低い用語です。
『直ちに』は遅れることは一切許されない程度、『速やかに』はできる限り速く、『遅滞なく』は、正当又は合理的な理由による遅れであれば許される程度、であると解されています。

(d)『科料』と『過料』

『科料』と『過料』とも、金銭の支払いを命じる罰則です。読み方は、両方とも『かりょう』ですが、前者を『とがりょう』後者を『あやまちょりょう』などとよぶこともあります。『科料』は、1,000円以上10,000円未満の金銭支払いを命じる刑罰であり、『過料』は行政処分の一種で刑罰ではありません。ちなみに、10,000円以上の金銭の支払いを命じる刑罰は、罰金になります。

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