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化学物質審査規制法の改正情報
平成21年の化審法の改正は、二段階施行となっており、当面の間新しい法規制に対する理解と実務上のフォローが必要となることから、以下にこれまでの改正経緯や今回の改正概要等、基本的な事項を俯瞰することとします。
化審法の制定と改正沿革
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)については、昭和48年の制定以降、新たな環境問題や国際基準への対応するため、幾度の改正が行われています。
以下にこれまでの改正の経緯を整理します。
化審法制定/昭和48年10月16日法律第117号(施行昭和49年4月16日)
昭和40年代は公害問題が悪化していた時代であり、昭和45年には公害国会で各種公害立法がなされました。そのような中、ポリ塩化ビフェニル(PCB)による環境汚染問題が発生。その代表的な事件が、食用油にPCBが混入し、これを摂取した人たちが顔面への色素沈着など肌の異常、頭痛、肝機能障害などを引き起こした「カネミ油症事件」です。
これを受けて、PCB類似の性状、すなわち、「難分解性」、「高蓄積性」、「継続的に摂取される場合に人の健康を損なうおそれ(人への長期毒性)」を有する化学物質を規制するため、昭和48年「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(以下「化審法」)が制定されました。
1.新規化学物質の事前審査制度の導入
新たに製造又は輸入される工業用化学物質については、それらを製造又は輸入を開始する前に、当時の厚生大臣及び通商産業大臣に対して届出を行い、PCB類似の性状を有していないかどうかの審査を受けて、その安全性について確認を受けた後でないと製造又は輸入をすることができないという、「事前審査制度」が導入されました。
2.特定化学物質の製造等に関する規制
PCB類似の、「難分解性」、「高蓄積性」及び「人への長期毒性」を有する化学物質を、「特定化学物質」として政令で指定し、指定された特定化学物質については、製造、輸入、使用を許可制にするなどして厳格に管理することとされました。
昭和61年化審法改正/昭和61年5月7日法律第44号(昭和62年4月1日施行)
昭和48年法から十数年を経て、先進国において化学物質の安全確保対策が進展し、OECD(経済協力開発機構)の上市前最小安全性評価項目に対応する必要が生じました。
また、昭和48年法では、生物の体内への蓄積性を有さない化学物質を規制することができなかったため、金属洗浄に用いられていた塩素系有機溶剤のトリクロロエチレンやクリーニング業等で使用されていたテトラクロロエチレン等の化学物質による環境汚染に対応できなくなっていました。
このような状況を受けて昭和61年に化審法の改正が行われました。
昭和61年改正の主な内容
人体への蓄積性はさほどないが環境中に大量に排出されることによる汚染が顕在化していた「トリクロロエチレン」、「テトラクロロエチレン」等の化学物質を規制する「第二種特定化学物質」を創設したほか、「第一種特定化学物質」(従来の「特定化学物質」)、「指定化学物質」による管理制度が導入されました。
平成11年中央省庁基本法施行法による化審法の一部改正(平成13年1月6日施行)
平成11年12月中央省庁基本法施行法により化審法の一部改正が行われ、新規化学物質の届出・審査、指定化学物質の指定・有害性調査指示、第二種特定化学物質の数量制限に係る認定等については、経済産業省、厚生労働省、環境省の三省が共同で所管することになりました。
平成15年化審法改正/平成15年5月28日法律第49号(平成16年4月1日施行)
昭和61年の改正以来十数年が経過し、国内外での化学物質の管理をめぐる取り組みは大きく進展を見せていました。欧米の審査規制に関する法制においては、人の健康への影響だけでなく、環境中の動植物への影響の観点が含まれているのが一般的となっており、国内においても、同観点からの水質環境基準の設定や農薬取締法の登録保留基準の見直しといった取組が進められていました。
また、平成4年の「環境と開発のための国連会議」で採択された「リオ宣言」やこの宣言の諸原則を実施するための「アジェンダ21」等が合意されて以降、国際的にも化学物質のリスク評価に基づく適切なリスク管理の重要性に対する認識が高まっていました。特に、欧米の事前審査制度においては、環境中への放出可能性がないような新規化学物質に関する柔軟な対応が行われており、国内での法的整合性が課題となっていました。
これらの動向に対応するため、平成15年に化審法の改正が行われました。
1.「第三種監視化学物質」の導入
化学物質の動植物等生態系への影響についても規制する必要があることが認識され、これを規制する「第三種監視化学物質」が創設されました。
2.「第一種監視化学物質」の導入
難分解性、高蓄積性の性状を有する既存化学物質について、長期毒性の有無が明らかになるまでの間も、法的な監視の下に置くこととされました。
3.環境への放出可能性に応じた措置の導入
新規化学物質の審査について、製造・輸入数量、取扱いの方法等から判断される環境への放出可能性に応じた措置を講ずることとなりました。
4.有害性情報の報告義務付け
製造・輸入事業者が一定の有害性を示す情報を入手した場合には国へ報告しなければならないこととなりました。
<規制物質ごとの措置内容>
規制物質 | 性状 | 措置内容 |
---|---|---|
第一種特定化学物質 (PCB等) |
●難分解性 ●高蓄積性 ●長期毒性又は高次捕食動物への慢性毒性 |
□製造・輸入の許可(事実上禁止) □特定の用途以外での使用の禁止 □政令指定製品の輸入禁止 □回収等措置命令(物質・製品の指定時、法令違反時) |
第二種特定化学物質 (トリクロロエチレン等) |
●難分解性 ○低蓄積 ●長期毒性又は生活環境動植物への慢性毒性 |
□製造・輸入予定、実績数量、用途等の届出 □必要に応じて、製造・輸入予定数量等の変更命令 □取扱いに係る技術上の指針の公表・勧告 □表示の義務・勧告 |
第一種監視化学物質 (シクロドデカン等) |
●難分解性 ●高蓄積性 ▲毒性不明 |
□製造・輸入実績数量、用途等の届出 □合計1トン以上について物質の名称、届出数量の公表 □指導・助言(環境汚染防止に必要な場合) □必要に応じて有害性(人又は高次捕食動物への長期毒性)調査の指示 |
第二種監視化学物質 (クロロホルム等) |
●難分解性 ○低蓄積性 ▲長期毒性の疑いのある化学物質 |
□製造・輸入実績数量、用途等の届出 □合計100トン以上について物質の名称、届出数量の公表 □必要に応じて有害性(人への長期毒性) 調査の指示 |
第三種監視化学物質 (硝酸カドミウム等) |
●難分解性 ○低蓄積性 ▲動植物への毒性(生態毒性)の疑い |
□製造・輸入実績数量、用途等の届出 □合計100トン以上について物質の名称、届出数量の公表 □必要に応じて有害性(生活環境動植物への長期毒性)調査の指示 |
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