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産業廃棄物処理委託契約
基礎知識
1.契約の基本と廃棄物処理法による修正
産業廃棄物の処理の責任は排出事業者にあり、自ら処理することが前提となりますが、実務上は許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託することがほとんどです。その際、ポイントとなるのが排出事業者と産業廃棄物処理業者との委託契約です。
本来、契約行為は私法の大原則である契約自由の原則に基づき、@契約締結の自由、A相手方選択の自由、B内容の自由、C方式の自由、が認められています。しかし、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)では、これらの自由を規制した委託契約しか認められていません。
(1)廃棄物処理法による産業廃棄物委託契約の契約自由の原則の修正内容
@『契約締結の自由』の修正 同じ性状の廃棄物でも、定義によって契約先が異なります。
『契約締結の自由』に対しては、@委託するものが産業廃棄物であること、A委託する産業廃棄物の処理が可能な許可を得ている業者と契約すること、という修正がされています。たとえば、木くずの場合、建築業者や家具製造業者の産業活動によって生じたものであれば産業廃棄物となりますが、それ以外の業種から出されたものは、たとえ産業活動によって生じたものであっても事業系一般廃棄物となり、一般廃棄物処理業の許可を得ている業者にしか処理の委託をすることができません。
同じ性情の廃棄物であっても、業種により廃棄物の定義が異なるため、それぞれの許可業者としか契約できないことになります。
A『相手方選択の自由』の修正 許可業者以外との契約はできません。
上記同様、廃棄物の定義に従い、その廃棄物を処理する許可を得ている業者としか、委託契約を締結することはできません。
本来、市場では取引価格が安いとか、高度の技術を有している、という要素が相手方選択の重要なポイントとなりますが、廃棄物処理法においては、許可が最優先され、その中で市場優位性を求めることになります。
B『内容の自由』の修正 三面契約・再委託契約は原則禁止です。
経済の大原則では、取引価格は『神の見えざる手』である市場に決定権がありますが、廃棄物処理法では『適正な対価の負担』がなく不法投棄や不適正処理が行われた場合、排出事業者に原状回復等の措置命令が用意されているなど、契約内容についても規制修正がなされています。
また、排出事業者−収集運搬業者−処理業者での三面契約の原則禁止、再委託の原則禁止などの規制規定も置かれています。
C『方式の自由』の修正 契約は必ず書面で行い、法定の項目を漏れなく盛り込みます。
私法において契約は口頭でも書面でも認められていますが、廃棄物処理法では、必ず書面で行うことが義務付けられており、記載事項についても施行規則によって詳細に規定されています。
(2)規制修正の理由
そもそも業や施設設置の許可といった許認可とは、一般に禁止されていることを、一定の要件を満たすことにより、解除するという制度です。廃棄物の処理は、公衆衛生や環境保全の観点から非常に重要な業務であるため、都道府県知事、市町村長の許可制が法定化されています。従って、契約の相手側は、廃棄物処理業を営むために必要となる能力・設備を有している者として許可を得た業者に限られることになります。これが『相手方選択の自由』の規制修正の理由です。
廃棄物処理法において、委託契約について『相手方選択の自由』以外にも上記のような規制修正を加えているのは、許可制をとってもなお、不法投棄や不適正処理などの事件が頻発しているからであるといえます。たとえば、価格のある程度の制限や三面契約の禁止は、適正処理を実施するために不可欠となる資金を確保することを目的としています。処理料金に満たない廉価な値段で収集運搬を請け負わざるえない場合や、中間搾取が行われると、不法投棄につながる危険性が増大することは誰の目にも明らかでしょう。また、書面によらない契約の場合、契約自体がなかったこととして不法行為が行われることも想定できます。こうした危険を未然に防止することが、委託契約の規制修正の理由であると考えられます。
2.廃棄物処理法による契約の基本とチェックポイント
(1)委託契約の基本
@委託契約に含まれるべき事項(法第12条第4項 ⇒ 令第6条の2 ⇒ 則第8条の4の2)
委託契約は、書面により行い、当該委託契約書には、次に掲げる事項についての条項が含まれていなければなりません。
■委託する産業廃棄物の種類及び数量
■産業廃棄物の運搬を委託するときは、運搬の最終目的地の所在地
■産業廃棄物の処分又は再生を委託するときは、その処分又は再生の場所の所在地、その処分又は再生の■方法及びその処分又は再生に係る施設の処理能力
■産業廃棄物の処分(最終処分(法第十二条第三項に規定する最終処分をいう。以下同じ。)を除く。)を委託するときは、当該産業廃棄物に係る最終処分の場所の所在地、最終処分の方法及び最終処分に係る施設の処理能力
■委託契約の有効期間
■委託者が受託者に支払う料金
■受託者が産業廃棄物収集運搬業又は産業廃棄物処分業の許可を受けた者である場合には、その事業の範囲
■産業廃棄物の運搬に係る委託契約にあつては、受託者が当該委託契約に係る産業廃棄物の積替え又は保管を行う場合には、当該積替え又は保管を行う場所の所在地並びに当該場所において保管できる産業廃棄物の種類及び当該場所に係る積替えのための保管上限
■前号の場合において、当該委託契約に係る産業廃棄物が令第六条第一項第三号 イに規定する安定型産業廃棄物であるときは、当該積替え又は保管を行う場所において他の廃棄物と混合することの許否等に関する事項
■委託者の有する委託した産業廃棄物の適正な処理のために必要な次に掲げる事項に関する情報
□当該産業廃棄物の性状及び荷姿に関する事項
□通常の保管状況の下での腐敗、揮発等当該産業廃棄物の性状の変化に関する事項
□他の廃棄物との混合等により生ずる支障に関する事項
□当該産業廃棄物が次に掲げる産業廃棄物であつて、日本工業規格C〇九五〇号に規定する含有マークが付されたものである場合には、当該含有マークの表示に関する事項
・廃パーソナルコンピュータ
・廃ユニット形エアコンディショナー
・廃テレビジョン受信機
・廃電子レンジ
・廃衣類乾燥機
・廃電気冷蔵庫
・廃電気洗濯機
■委託契約の有効期間中に当該産業廃棄物に係る前号の情報に変更があつた場合の当該情報の伝達方法に関する事項
■受託業務終了時の受託者の委託者への報告に関する事項
■委託契約を解除した場合の処理されない産業廃棄物の取扱いに関する事項
A委託契約書に添付すべき書面(法第12条第4項 ⇒ 令第6条の2 ⇒ 則第8条の4)
委託契約書には、次に掲げる委託契約書の区分に応じ、それぞれ定められた書面を添付しなければなりません。
■産業廃棄物の運搬に係る委託契約書
□通常の場合 許可証の写し
□廃棄物の再生利用に係る特例の場合 認定証の写し
□受託者が他人の産業廃棄物の運搬を業として行うことができる者であつて委託しようとする産業廃棄物の運搬がその事業の範囲に含まれるものであることを証する書面
■産業廃棄物の処分又は再生に係る委託契約書
□通常の場合 許可証の写し
□廃棄物の再生利用に係る特例の場合 認定証の写し
□受託者が他人の産業廃棄物の処分又は再生を業として行うことができる者であつて委託しようとする産業廃棄物の処分又は再生がその事業の範囲に含まれるものであることを証する書面
B委託契約書に添付すべき書面(法第12条第4項 ⇒ 令第6条の2 ⇒ 則第8条の4) 委託契約書は、5年間保管しなければなりません。
(2)委託契約のチェックポイント
@業者選定 最低この程度は確認しよう
■許可の確認
□委託する廃棄物を適正処理するための範囲を含んでいるか
□許可の期限は有効か
□収集運搬の場合、引受・引渡場所双方の許可を有しているか
■処理料金は適切な価格か(不当に安価ではないか)
■情報公開は適切になされているか(ホームページ等を確認)
■行政処分などをたびたび受けていないか(管轄自治体のホームページで確認)
■施設は適切に管理されているか(見学の実施)
A契約書作成
■法定記載事項に漏れはないか(2(1)@で確認)
■代表権のあるものとの契約となっているか(商業登記による確認)
□代表権者交代の場合の措置、例えば、通知義務規定を盛り込んだほうがよい
■印紙は添付したか
■平成18年改正は網羅されているか(「平成18年改正について」で確認)
□委託する廃棄物の性状などについて、事前に詳細な打ち合わせをしたか
■3面契約となっていないか(同一業者に一貫して委託する場合を除く)
■添付書面は適正か(許可証の有効期限、範囲をもう一度確認)
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